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第一試合
マーシオ・クロマド vs 中山 巧 ×
(スポート・フィジカル) (パレストラTOKYO)
1R 3'32"フロントチョークスリーパー
観戦記
 
 NKホールと言えば、伝説。今年の伝説の幕を切って落とすのは、超激戦区であるウェルター級のキーマン対決となった。10戦8勝2分けのキャリアを持つ中山は、その内の6戦が今年一年でのレコードという、驚異の「タフシューター」である。しかも、6戦の内の1勝は米国にてHnSのエース“ヘンリー・マタモロス”からもぎ取ったもの。そんな、中山とは対照的な戦績を持つマーシオ・クロマド。公式戦を3戦しか行っていないが、「宇野薫を失神させる」という過去を持つ、紛れもないトップランカーだ。

クラスBという、サバイバルマッチを駆け抜けて来た中山に対し、過去の対戦相手が、全てウェルター級のトップ選手というクロマド。果たして、叩き上げの中山の勝利が期待されたが、結果は1R39秒。クロマドのギロチンチョークで中山失神。クロマドのパンチの牽制に、反射的に下を向いてしまった中山。次に記憶が戻った時には、リングに横たわっていた。今まで、どんな接戦になっても試合をあきらめず、その精神力の強さが際立っていた中山。悲しいことに、中山巧が何者かを知らしめることさえ出来ずに一本負け。これが、修斗のレベル・・・。これが、世界のトップの実力・・・。

 三島、ルミナ戦と黒星が続いていたクロマドは、再浮上のきっかけを掴んだ。間違いなく、2002年の挑戦者決定戦に絡んでいくだろう。敗れた中山には、一日も早い復帰を望みたい。たった一度の負けなんて、修斗の歴史を鑑みれば必然。そう、初めての失神は、若くない中山に修斗の神様が、本当に「チャンピオンになりたいのか」と問いかけているのだ。




第二試合
加藤 鉄史 vs 池本 誠知 ×
(PUREBRED大宮) (ライルーツコナン)
判定 3-0
観戦記
 
 共に混迷のミドル級で、伸び悩んでいる二人。2000年の3月には、マッハとタイトルマッチで僅差の判定までもつれ込ませた実力者、加藤。自身の戦績には、3つの黒星がある。1つ目は、中尾受太郎に。2つ目は、桜井“マッハ”速人に。最後は、あのアンデウソン・シウバに。どの選手を見ても、超一流。特に受太郎には、その後しっかりとリベンジまで果たしている。そんな、加藤の弱点は自信の無さ。「一つ一つ積み重ねてきた自分は、負けたら終わり。」とプロとして余りにも悲しい発言。その練習量と実績は紛れもない世界トップクラス。「UFCに出たい」と、熱望するも未だ果たせずにいるが、出れば獲れる(タイトルを)と言ったところか・・・。前戦の、復帰戦でもハワイのカリスマ“レイ・クーパー”相手に判定勝ち。周りは、出来の悪さを指摘するが、あのレイ・クーパー相手に勝つこと自体が困難だと言うべきだろう。

池本にとっては、最後の未経験の大舞台NKホール。前回のスティーブ・バーガー戦では、足の負傷にも関わらず、最後まで攻めの姿勢を貫いた。そんな池本のファイトスタイルは「攻撃こそ最大の防御」を体現するもの。9戦4勝と、なかなか勝ち星に恵まれないが、誰と試合をしても、良い試合になると、潜在能力の高さもお墨付き。ランカーにもなり、後は、マッハ目がけて勝ちを積み重ねるだけ。

しかし、池本にとっては、相手が悪かった。池本の最大の持ち味は「アグレッシブに攻め抜くこと」。対する加藤は、マッハの攻撃力も打ち消す程の、「受けの名手」。勘違いしてはいけないのは、加藤は、ただ守って受けが強いのでは無く、相手の攻撃を殺して自分の攻撃を加えることが出来るという意味。

1Rは、池本のタックルを切った加藤が、ラウンドを支配。マウント、スイープ、巧みで力強い打撃で圧倒する。池本も驚異の背筋力で、下から返そうと試みるが、逆に加藤のバランスの良さ、力強さが際立った。続く2Rにおいても、終始加藤上・池本下の図式が続く。2R終了時に池本は右目を腫らすも、積極的な下からの動きで加藤のスタミナ切れを誘った。

最終3Rには、池本得意の「ジャンピングニー」が飛び出した。しかし、同時にタックルを狙った加藤が、抱え上げテイクダウン。一発逆転を狙った池本の飛び道具が、試合の勝敗を決定付けた。3分過ぎには、反転して下から逃がれようとする池本に、密着してバックを制す加藤。そのまま、ラウンド終了まで、池本を押さえ込み完勝。

ただ、判定勝利をものにした加藤の表情に喜びは一切なし。自身のスタミナ切れに納得が行かなかったのだろう。見ている者としても、アレックス・クック戦を思い出す様な結末に、加藤の奮起を期待したい。当然トップランカーとして、一本勝ちも狙っていただろう。2R、3Rと更に厳しく攻めたてないといけないのだろう。それを、承知しているからこその加藤の態度。悔しい気持ちが、男を成長させる。次の加藤は必ず一本勝ちを披露するであろう。




第三試合
中尾 受太郎 vs 和田 拓也 ×
(シューティングジム大阪) (K'z FACTORY)
1R 三角締め
観戦記
 
 混迷のミドル級で、今最も勢いのある「ミスタートライアングル・中尾受太郎」。デビューした時は、未来のエースと言われた男が、紆余曲折を経て30過ぎにして全盛期を迎える。トーマス・デニー、ラバーン・クラークと修斗公式戦で連勝、アメリカUFCでルイス&ペデネイラス所属のトニー・デソウザからド派手なKO勝利を収めている。デビューから、勝ち負けを繰り返してきた男が、連戦連勝。息子・天丸も授かりいよいよタイトル獲り目前といったところ。

 今回のNKホールのテーマは下克上。チャンピオンシップ以外は全てが下位ランカーと、トップランカーとの対戦であるが、この試合は、最も実力差を感じたマッチメイクであったように思う。和田は6戦4勝と、激戦のクラスBを無傷で勝ち抜いてきた選手。しかし、一本勝ちは一つもなく、テイクダウンを取ってからの攻めに課題が見られる。特に、今日の相手中尾からテイクダウンを奪うということは、すなわちあの結末が・・・。

 試合は、分かっていても三角絞め。和田が初回早々テイクダウンを取るも、攻め気を感じさせない中尾だが、和田が右肩を手前に引いた所で、自然に足を和田の肩口に持って来て、がっちりと三角絞めへ。絞めてから約15秒ほどであえなくタップを奪う。中尾にとっては、練習で一本取ったかのような感覚に違いない。普段着の中尾。特に緊張するタイプでは無い良さが、逆に闘志の無さに見て取れた今までだが、子供も生まれ内面は静かに燃え上がっているようだ。

 和田は、決して弱くない。しかし、まだまだ強くは無い。アマリングス優勝。コンバットレスリング優勝。あのゴールデントロフィーでは8人トーナメントに続き、ワンマッチも一本勝ちしている。“ワダタク”と呼ばれ、人気もある。だからこそ、彼には強くなってもらいたい。精神力の強さでも良い、技の巧みさでも良い、打撃の迫力でも良い。そう、見ている者が驚くようなプロとしての何か。これからが、成長著しい時期だからこそ、そんな無理を言ってしまう。




第四試合
三島☆ド根性ノ助 vs 雷暗 暴 ×
(格闘サークルコブラ会) (フリー)
判定 2-0
観戦記
 
 “さあ、挑戦者決定戦だ。”

気は早いかもしれないが、この試合の勝者が、メインで決定するチャンピオンへの挑戦者となり得る可能性は高い。一度は、チャンピオン決定戦の調印式まで行った三島。ケガによる欠場で周りにも、対戦相手であった五味にも迷惑をかけた。年齢的にも、最後のチャンスだと、自分にも言い聞かせていただけに再浮上は困難に思われたがしかし、三島の心は折れていなかった。サステインも見捨ててはいなかった。欠場したことは、許される事ではないが“シューター・三島☆ド根性ノ助”を失う事は、今の修斗には考えられない。去年のNKホール以来、花粉症と負傷欠場、試合から遠ざかっていたにも関わらず、彼の人気は止まることを知らない。それは、三島が派手なパフォーマンスで得たものでも無く、人の良さによる人柄で得たものでもない。れっきとした実力。彼が人気を得るようになったのは、修斗を体現できる数少ないシューターだからだ。2000年8月には、世界的ブラジリアン柔術家のマーシオ・フェイトーザと引き分け。内容も、テイクダウンやパス等世界の寝業師に、決してひけを取らない内容。その後は、11月にHnSでトニー・デドルフ相手に一部危ない場面を作るも腕十字で一本勝ち、年末のNKでは、宇野薫を失神させた、マーシオ・クロマドにヒザ十字で一本勝ち。ご存じの様に、宇野の王座返上劇でタイトル挑戦を待たされていた三島にとっては、本当に長かった一年だ。脇バラが治ってからは、11月のカンペオナートで優勝。動きにキレも戻ってきて、残されたのは待ちに待った修斗への復帰戦のみと言える。

雷暗暴。コンテンダーズ以来、リングネームを漢字に変え心機一転の雷暗。無所属とあるが、セコンドに“友達”のマモルが付いていて分かる様に、日本での拠点はシューティングジム横浜。一時、フランク・シャムロックに師事し、アメリカに帰っていたが、現在のベースは修斗。ただ、チャンスがあれば、UFCでもKOKでも上がる意志があり、自分を高める事に積極的だ。そんな、雷暗だが今日のメインには複雑な気持ちだろう。ウェルター級一位の五味とは、2000年11月に試合をした。圧倒的不利の声を覆すような鋭いヒザ蹴りで、結果的には五味を長期欠場に追い込んだ。惜しくも、五味の気迫に押され判定負けを喫したが、その後もトニー・デドルフ、八隅孝平と連勝しているだけに、俺にもチャンスをという気持ちが強いだろう。スタイルとしては、過去にも、藤原正人をヒザで病院送りにしていることから打撃の印象が強いが、実は類希な寝業師である。コンテンダーズでは、柔道家の小室から判定ながら勝ち星を上げている。

時期挑戦者決定戦は、両者「打・投・極」が優れたトータル・ファイター同士の潰し合いであり、惜しくもチャンピオン決定戦に出ることの出来なかった二人の執念のぶつかり合いでもある。試合は、その実績に恥じない濃密でスピード溢れる内容となった。1Rは、三島が果敢にテイクダウン狙い。雷暗は下からリバーサルを試みる展開に。三島はインサイドガードからの打撃は出さずに、ワンチャンスを狙いアキレスへ。雷暗も同時にアキレスを取るも、両者極めるには至らず。2Rも開始早々、三島が外掛けからテイクダウンを奪い、上を取る。すかざず、マウントの奪取には成功するも雷暗も攻めさせず最終ラウンドへ。

 最終ラウンドは、ライアンの打撃が火を噴いた。強烈なヒザ蹴りや左ミドルでコーナー際まで三島を追い込み、テイクダウンを取る。この試合初めて下になった三島にパンチで攻め立てる。三島も起死回生のスイープを成功させるが、雷暗も負けていない。ラスト1分で再び上をキープすると、パンチでのKOを狙ってがむしゃらに打ち下ろして行く。二人の動きが止まる事の無い、ノンストップ・バトルに会場は沸いた。この日、一番のテクニックと力強さを見せつけた試合に勝利した三島は、いよいよチャンピオンシップに挑戦か?三島には、チャンピオンシップの前に花粉症のアレルギー治療があるだろうが、プロとして、しっかりとコンディションを作ってきてもらいたい。

 またもや、僅差の判定で敗れた雷暗には、試合間隔を空けずに、次戦に期待したい。




第五試合
桜井"マッハ"速人 vs ダン・ギルバート ×
(GUTSMAN修斗道場) (ヘル・ハウス)
1R 1'51"ヒールホールド
観戦記

 説明不要、日本が誇る世界の格闘家・桜井“マッハ”速人。アンデウソン・シウバにまさかの判定負けを喫し、“友達のベルト”を手放すも、評価が落ちることは無い。休養中には、自らのジム(マッハ道場)を設立し、練習環境も整えた。コンディション調整も考えるようになり、今まで以上に練習にも時間を割き、実力を蓄える。今まででさえ、無類の強さを誇っていたマッハに、もう死角は無い。年齢的にもこれから、充実期を迎えるマッハに今後負けはないと断言しよう。

 対する挑戦者はダン・ギルバート。植松直哉と対戦したジョー・ギルバートの兄(確か・・・)は、過去2戦は中尾受太郎にTKOによる完勝、加藤鉄史にはスリーパとイマイチ実力の評価が難しい。

 試合を見ると、印象に残ったのはマッハの完成度の高さであり、極めの強さ。久しぶりに見るマッハの関節技に、ミスター修斗の底知れぬ実力を、少しだけ垣間見た。ダンの事を挑戦者と記したのも、余りの実力差から。マッハが必死になる相手は、やはり修斗には、もういないのか。もっとマッハの限界を見るのなら、UFCのベルトが必要だ。




第六試合
(ライト級チャンピオンシップ)
アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラ vs 戸井田 カツヤ ×
(ワールド・ファイト・センター) (和術慧舟會)
判定 3-0
観戦記
 
 修斗のパウンドフォーパウンド。過去に極められそうになった場面も、KOされそうになった場面も見せていないペケーニョ。今年は、マッハがタイトル戦を落としているだけに、MVPの最有力候補と言える。必殺のギロチンは勝田戦で更に奥深さを増し、未だ対戦相手に防ぐ手だては無い。

 対する戸井田はあれよあれよとランキング一位に上り詰めたシンデレラボーイ。戦績はクラスB時代に植松に腕十字で敗れた最悪のデビュー戦と、井上和浩に僅差の判定負けを喫した2つの黒星が刻まれている。では、何故戸井田がライト級で一位にまで上り詰めることができたのか。それは、初めてのランカー対決となった2001年1月の池田久雄戦で名前を上げたからであろう。実力は折り紙付きの池田の復帰戦に指名された戸井田は、このチャンスを圧倒的な判定勝ちでものにする。特に、度々池田を追い込んだ寝技力は、後に戸井田の代名詞ともなる。その後も、2001年5月には、当初植松が対戦予定であったシュート・ボクセの雄“オズマール・ディアス・フェルナンデス”と対戦。何もさせずに、腕十字で一蹴し、期待に応えた。続く7月にはバレット・ヨシダを精神的にも、肉体的にも追い込み判定勝利。間もなく勝田哲夫がチャンピオンシップに敗れた為、ライト級一位へランキングされる。挑戦することさえ難しいライト級のチャンピオンシップに、実力と運を兼ね備えた日本人の希望が、今夜登場する。

 試合は、終始ペケーニョの攻めが続く。特に上を取ってからのペケーニョの打撃は鬼の攻めだ。1R中盤に早くも目を腫らす、戸井田。戸井田も負けずに足を利かせて粘ってはいるが、攻め入る隙がない。2R入っても、ペケーニョが上、戸井田下の図式は変わらない。ペケーニョの動きが止まらない。ポジションを狙いながらの鋭いパンチ。一瞬戸井田が足関を狙うがペケーニョの反応が早い。2R中盤にして出血が見られる戸井田。戸井田の懸命のスイープも、空中で泳ぐ様にバランスを保ち、体勢を整えてしまう。ラウンド終了まで、ペケーニョが手を出し続け、戸井田は瀕死の状態に。

 最終ラウンドの前のインターバルで、肩で息をしている戸井田と、口に水を含みもせず、座りもせずといった余裕のペケーニョ。3R自体も、終始ノゲイラが攻め続けた。戸井田の顔は真っ赤に染まり、ペケーニョの攻めは止むことが無い。2分30秒過ぎに、会心のスイープが決まるが、下からペケーニョはやすやすと返してしまう。残り1分というセコンドの叫びが、「耐えろー!!」と言っている様に聞こえる。

息一つ切らさずに勝利を手にしたペケーニョ。ただの一度もギロチンをかけさせなかった戸井田。しかし、試合は完全にペケーニョ。三者30−26という大差の判定がその試合ぶりを物語る。改めて、何でも出来ることを見せつけて、勝利したペケーニョ。彼の対戦相手を捜すのが大変だ。





第七試合
(ウェルター王座決定戦)
五味 隆典 vs 佐藤 ルミナ ×
(木口道場) (K'z FACTORY)
判定 3-0
観戦記
 
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試合後記

 まず、思いつくままに・・・。パンフレットの紙が柔らかくて安っぽくて、嫌だった。そして、訳の分からない女性が花束を贈呈するのが嫌だった。後は、佐藤ルミナが負けて寂しかった。負けて悔しかったのでもなく、残念でもなかった。ただ、寂しかった。これで、もうルミナをメインで見ることはない、とも思った・・・。去年は会場を出ると、雨だった・・・。
 しかし、今夜は雲一つ無い真っ暗闇。あれだけの熱い戦いを目にしてきたのに、自分は夢の中にいるかのような、ぼんやりとした気持ちだった。ただそんな中、試合中から止むことなく続いている胃の痛みと、冷たい夜風が僕を現実に戻す。佐藤ルミナが初めて負けた。僕の中では、そんな気がした。



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