“さあ、挑戦者決定戦だ。”
気は早いかもしれないが、この試合の勝者が、メインで決定するチャンピオンへの挑戦者となり得る可能性は高い。一度は、チャンピオン決定戦の調印式まで行った三島。ケガによる欠場で周りにも、対戦相手であった五味にも迷惑をかけた。年齢的にも、最後のチャンスだと、自分にも言い聞かせていただけに再浮上は困難に思われたがしかし、三島の心は折れていなかった。サステインも見捨ててはいなかった。欠場したことは、許される事ではないが“シューター・三島☆ド根性ノ助”を失う事は、今の修斗には考えられない。去年のNKホール以来、花粉症と負傷欠場、試合から遠ざかっていたにも関わらず、彼の人気は止まることを知らない。それは、三島が派手なパフォーマンスで得たものでも無く、人の良さによる人柄で得たものでもない。れっきとした実力。彼が人気を得るようになったのは、修斗を体現できる数少ないシューターだからだ。2000年8月には、世界的ブラジリアン柔術家のマーシオ・フェイトーザと引き分け。内容も、テイクダウンやパス等世界の寝業師に、決してひけを取らない内容。その後は、11月にHnSでトニー・デドルフ相手に一部危ない場面を作るも腕十字で一本勝ち、年末のNKでは、宇野薫を失神させた、マーシオ・クロマドにヒザ十字で一本勝ち。ご存じの様に、宇野の王座返上劇でタイトル挑戦を待たされていた三島にとっては、本当に長かった一年だ。脇バラが治ってからは、11月のカンペオナートで優勝。動きにキレも戻ってきて、残されたのは待ちに待った修斗への復帰戦のみと言える。
雷暗暴。コンテンダーズ以来、リングネームを漢字に変え心機一転の雷暗。無所属とあるが、セコンドに“友達”のマモルが付いていて分かる様に、日本での拠点はシューティングジム横浜。一時、フランク・シャムロックに師事し、アメリカに帰っていたが、現在のベースは修斗。ただ、チャンスがあれば、UFCでもKOKでも上がる意志があり、自分を高める事に積極的だ。そんな、雷暗だが今日のメインには複雑な気持ちだろう。ウェルター級一位の五味とは、2000年11月に試合をした。圧倒的不利の声を覆すような鋭いヒザ蹴りで、結果的には五味を長期欠場に追い込んだ。惜しくも、五味の気迫に押され判定負けを喫したが、その後もトニー・デドルフ、八隅孝平と連勝しているだけに、俺にもチャンスをという気持ちが強いだろう。スタイルとしては、過去にも、藤原正人をヒザで病院送りにしていることから打撃の印象が強いが、実は類希な寝業師である。コンテンダーズでは、柔道家の小室から判定ながら勝ち星を上げている。
時期挑戦者決定戦は、両者「打・投・極」が優れたトータル・ファイター同士の潰し合いであり、惜しくもチャンピオン決定戦に出ることの出来なかった二人の執念のぶつかり合いでもある。試合は、その実績に恥じない濃密でスピード溢れる内容となった。1Rは、三島が果敢にテイクダウン狙い。雷暗は下からリバーサルを試みる展開に。三島はインサイドガードからの打撃は出さずに、ワンチャンスを狙いアキレスへ。雷暗も同時にアキレスを取るも、両者極めるには至らず。2Rも開始早々、三島が外掛けからテイクダウンを奪い、上を取る。すかざず、マウントの奪取には成功するも雷暗も攻めさせず最終ラウンドへ。
最終ラウンドは、ライアンの打撃が火を噴いた。強烈なヒザ蹴りや左ミドルでコーナー際まで三島を追い込み、テイクダウンを取る。この試合初めて下になった三島にパンチで攻め立てる。三島も起死回生のスイープを成功させるが、雷暗も負けていない。ラスト1分で再び上をキープすると、パンチでのKOを狙ってがむしゃらに打ち下ろして行く。二人の動きが止まる事の無い、ノンストップ・バトルに会場は沸いた。この日、一番のテクニックと力強さを見せつけた試合に勝利した三島は、いよいよチャンピオンシップに挑戦か?三島には、チャンピオンシップの前に花粉症のアレルギー治療があるだろうが、プロとして、しっかりとコンディションを作ってきてもらいたい。
またもや、僅差の判定で敗れた雷暗には、試合間隔を空けずに、次戦に期待したい。
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