■ 第5回 「【格闘家】VS【プロレスラー】頂上決戦」 ■
 
  いよいよ1週間後に迫った菊田早苗VS美濃輪育久。パンクラスのエース近藤の不振
が続く中、8周年記念興行のメインを飾るに相応しいカードが発表された。両者とも、最
近の躍進振りは目を見張るものがあり、ファン並びに業界内の評価もうなぎ上りだ。今回
は、まさに旬な対戦となった両者の紹介をしよう。



 グラバカ対パンクラス横浜。パンクラスのリング上で、幾度と無く繰り広げられてきたつぶし
合いは、「格闘家」対「プロレスラー」というイデオロギー闘争を生み出した。グラバカの総帥
菊田は、アブダビを制覇することで「寝技世界一」を襲名し、自分の目指す格闘家像にま
た一歩近づいたと言える。一方プロレスラー美濃輪も、常にアグレッシブに攻め続けるその
闘いで、会場全体を美濃輪ワールドに引きこみ、観客論という観点からは文句の無い試
合を繰り広げている。

 菊田早苗がパンクラスに入団して早2年が経過しようとしている。約2年かけて彼の戦績
は14戦して12勝1敗1引き分け1無効試合。そのキャリアには、ムリーロ・ブスタマンチに喫
した微妙な判定負け以外は、そのほとんどが完勝といえる内容である。そして12の勝ちぼ
しの中には「鈴木みのる」や「高橋義生」といった、旗揚げ組みのトップ選手から奪った勝
利も含まれている。菊田の勝利の方程式は、今までのパンクラシスト達の勝利とは違い、
打撃に付き合わず、テイクダウンからポジションを探り、隙あらばトップからの打撃や関節技
と言ったものだ。相手の良い所を出さずに、自分の良い所だけを出して勝つ。そんな「格闘
家・菊田」の勝ち続ける姿は、過去のパンクラスのスタイルを否定するかのようだった。事
実、時代は総合格闘技を迎合し、パンクラス自体の旧ルールにも、疑問が投げかけられ
、見直しが検討されていた時期でもあった。菊田早苗の闘い。それは、総合格闘家とし
てU系ファンに純粋な格闘技の強さ、寝技の強さを知らしめる闘いであったように思う。

 一方の美濃輪育久はというと、アントニオ猪木に憧れ、小さい頃からプロレスラーになる
ことを志したプロレス大好き少年であった。美濃輪少年が他の少年達と違ったのは、ただの
憧れで終らせずに、自分は絶対プロレスラーになるんだと言う底知れぬ意志を持っていたこ
とだろう。どんな些細な事でも、「これはプロレスラーになる為の試練なんだ」と意識する日
常を送り、結果パンクラシストとして今でもなお理想のプロレスラー像を目指している。

 そんな美濃輪が注目を集めるようになったのは、ネオ・ブラッドで優勝した頃からだろう。そ
れまでの美濃輪の評価といえば、他の若手パンクラシスト達と同じように、「個性が無い若
手」というものであったろう。しかし、頭を緑色にしたり、レガースにPUNKと入れていた事を
考えると、美濃輪の自己主張はその頃から始まっていたと言える。ネオ・ブラッドで初のタイ
トルを獲ると、マッチメイクも必然と注目を集めるようになり、メインを張ることも1回や2回で
は無くなっていた。セーム・シュルトとも死闘を演じ、UFC-Jではジョー・スリックを奇跡のハ
イキックで逆転勝利をものにし、ライトヘビー級王者山宮をグランドパンチでKO葬したパ
ウロ・フィリョを相手にしても、真っ向からぶつかり、最後3Rにはタックルを切りパイルドライバ
ーを食らわせるなど、超人的な試合内容が格闘技界で話題になるのに時間はかからなか
った。

 美濃輪が目指す闘いとは、対戦相手や観客、自分が試合をする空間にいる全ての人
々と心を通わせたい、というもの。時に美濃輪は、自分をアンダーグラウンドな人間と言う。
そんな裏の世界にいる自分が、対戦相手を通して表の世界に現れ、会場をアンダーワー
ルドな世界観で満たしたいと考えている。彼は、誰よりも強くなることよりも、誰よりも感動
を与えられるプロレスラーを目指しているのだ。

  

 誰よりも強くなることを目指している「格闘家」と、誰よりも感動を与える熱い試合を目
指している「プロレスラー」の闘い。全く目指す先の違う2人が、一本のベルトを賭け、つい
に激突する。「技術」対「精神(こころ)」の闘いに終りは無い。しかし、この試合では間違
い無く1つの結果が出る。この非情なまでのマッチメイクに勝ち負けがあるとすれば、美濃
輪の光を消すことが出来れば菊田の勝ち、敗者も賞賛を浴びるようなら美濃輪の勝ちだ
と言えるだろう。

                      〜「【格闘家】VS【プロレスラー】頂上決戦」完〜







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