観戦記&PHOTOアップ。


【第一試合】 71.0kg契約 5分2R
富樫 健一郎 vs ドゥドゥ・ギマラエス
(パレストラ広島) (ワールド・ファイト・センター)
判定 ドロー(1-1)
観戦記
 内村の負傷欠場により、急遽出場が決まった富樫健一郎。今年4月にも、急遽の代打出場を果たしており、修斗に賭ける思いは絶大だ。この思いを是非とも結果に繋げてもらいたかったが、ペケーニョいわく最も修斗向きと言われるギマラエスはなかなか手強かった。富樫の打撃がもう少し出せれば、と言う試合であった。




【第二試合】 フェザー級 5分2R
× 高橋 大児 vs 塩沢 正人
(K'z FACTORY) (和術慧舟會)
判定 3-0
観戦記
 ライト級からフェザー級に落として2戦目の塩沢は、キャリアに勝る高橋に完勝。塩沢は優れた技術で、腹固めからのサイド・チョークなど極め所はあったものの一本取れず。前回の木部戦も圧倒していながら一本取れなかったのが蘇る。あまりに良いポジションを獲ってから、1つの極め技に固執し過ぎる傾向にある。次は、4戦目。是非とも一本勝ちを見せて欲しい。




【第三試合】 02年度新人王トーナメント バンタム級準決勝 5分2R
× 生駒 純司 vs 阿部マサトシ
(直心会格闘技道場) (AACC)
判定 0-2
観戦記
 まだ2戦目にして、この人気。グレコ仕込みの派手な投げ、決して攻めることを辞めない驚異のスタミナ、そして勝利後のパフォーマンス。圧倒的に面白い試合内容に、見た目のかわいさも手伝ってクラスB選手とは思えない人気の持ち主である“阿部マサトシ”。そして、バンタム級驚異の新人でありながら、早くもクラスA入り、そして新人王が期待されているゴールデン・ルーキーである。
 
 対する生駒は、キャリア2戦と同等ながら、直心会所属で拠点が関西なのも手伝って、いかんせんその知名度は低い。しかし、持ち前の気の強さと、直心会仕込みの打撃、そして前戦でキャリアに勝る石井俊光相手に一本勝ちしたことで、ノッている選手である。

 この試合、わずか2Rながら、壮絶な死闘が繰り広げられた。まずは、生駒の打撃のラッシュ。捌ききれないマサトシは、強引に組みつき反り投げ一閃。しかし、ひるまず生駒も下からの十字を仕掛ける。これによりタップ寸前まで追い込まれたマサトシだが、こんなピンチさえも、試合が面白くなる為に用意された展開なのかと思えてしまう。2分弱極められ続けるも、究極のエスケープを見せ、会場は開始3試合目にしてメイン級の盛り上がりを見せる。その後生駒も根性を見せるが、打撃のリズムが崩れ流れを変えられるような展開は作れず。逆に、最大のピンチから脱出したマサトシは、水を得た魚のように自由奔放に動きを創る。幾度も豪快な投げを決めてみせると、マサトシの勝利は動かないものとなっていた。

 次は、いよいよ新人王トーナメント決勝戦。漆谷・端のどちらが上がってきても、レスリング対決。キャリアでは格上の相手になるシュエーションでさえも、マサトシが輝きを増す為の、材料にしか思えない。





【第四試合】 02年度新人王トーナメント ウェルター級準決勝 5分2R
川尻達也 vs 椎木 努 ×
(総合格闘技TOPS) (直心会格闘技道場)
1R 4'42" スリーパー・ホールド
観戦記
 修斗ウェルター級8位・川尻達也。クラスA・Bあらゆるシューター達の中で、今最も勢いがある男。群雄割拠のクラスB戦線を、日本人ばなれしたパワーと、寝業師と評判の相手をも凌ぐテクニックで、駆け抜けた逸材である。修斗の聖地・後楽園ホールには初登場の為、思ったより知名度は低いようだ。しかし、彼の試合を一度でも生で見たことがあるならば、誰もが口にするだろう“強すぎる・・・”と。
 
 ランカー対決が望まれる川尻だが、当面の目標は第一回新人王トーナメントを制すること。既にランカーである川尻にとっては、今日の準決勝、晴れの決勝でさえ格下相手の試合となり、周りからは対戦相手の体を心配する声すら聞こえて来る。しかし、そんな楽勝ムードが漂う中、本人は「今までの勝ちがまぐれと言われないように」と気を引き締め、更に練習で自分を追い込んで行く。

 そんな川尻の前に立ちはだかるのは、4月の下北で奇跡的な逆転KO勝ちを収めた椎木努である。直心会ということで、打撃には自信を持っており、特にカウンターには要注意だ。

 1R。川尻はリング中央にどっしりと構え、椎木がその周りで小刻みにリズムを刻んでいる。椎木はカウンタータイプだけに、なかなか自分からは手を出さない。椎木が打ってこないのを良いことに、川尻はあっさりと椎木を捕獲する。まずは、差し合い。すかさず、川尻が内掛けでテイクダウンを獲りに行く。両者、全身の筋肉がはち切れんばかりの力の入り様である。椎木はロープに首をつけ巧みに凌いでいたが、体の向きをリングの内側へ向けられて押しつぶされる。倒すと同時にハーフを獲るも、“あの川尻”が押さえ込むのに精一杯。椎木が下から、並々ならぬ力で、はね返そうとしているからだ。しかし、目を見張るべきは、やはり川尻。隙を付いて、椎木がうつぶせ気味に反転、エスケープしようとした正にその時。川尻の体は、椎木のバックに吸い付いていた。恐らくは、椎木に動く隙を与えたのも川尻の“仕掛け”だったのであろう。椎木の首には、これでもかと鍛えられた二の腕が食い込んでくる。強引にグングン締めてくる二の腕に、みるみる椎木の戦意は剥ぎ取られていく。顔が苦痛に歪むと、あとは“タップ”をするしか無かった。


 「これが川尻」

 強さと巧さとを兼ね備え、勝負度胸も座っている。リング上で勝利をアピールする姿からは、並々ならぬ自信が伝わってくる。試合後のコメントでは「上の人とやりたい」と、ついに野獣の牙が上位陣に向けられた。ウェルター級の上位ランカー達よ、だれでも良いから川尻の挑戦を受けてくれ。




【第五試合】 ウェルター級 5分2R
朴 光哲 vs トニコ・ジュニオール ×
(K'z FACTORY) (ワールド・ファイト・センター)
1R 4'50" TKO 
観戦記
 この勝負、頂点を目指す朴にとっては意地でも負けられない一戦である。共に、前戦の相手は村濱天晴であり、朴はヒザ十字により屈辱のタップアウト。対するトニコは、開始直後にダウンを奪い終始押し気味に進めるも、要所要所でテイクダウンを奪われ惜しい勝ち星を逃している。村濱相手に完敗を喫した朴と、圧倒したトニコ。そんな因縁浅からぬ一戦と言う訳だ。

 1R。ペケーニョの打撃の師匠であるトニコは、開始早々打撃で襲いかかる。ここで、修斗では考えられない展開を目の当たりにした。トニコが放つパンチの嵐を、朴がしっかりと目を見開きカウンターで迎撃しているのだ。結果打撃を封じられたトニコは、密着戦を余儀なくされた。テイクダウンを獲ったまでは良かったものの、すぐに朴はバックに回りチョークを決めかける。見た目はアゴの上からのようだったが、キャッチが宣告された。しかし、トニコだって負ける為にリングに上がっている訳ではない。何とか、チョークから逃れると、スタンドに戻すことに成功した。早々の乱打戦のダメージか、両者共に動きが鈍い。しかし、ここで朴の気持ちが試合を制した。パンチオンリーの攻めで、スタンディングダウンかと思われるようなラッシュを見せ、トニコを追い込む。最後にトニコが見せたプライドは、決してタップしない心であった。しがみ付いてきたトニコを振り払うようにテイクダウンすると、ハーフから徹底してパンチを落とした。間もなく、レフェリーにより、戦闘不能が言い渡される。

 村濱と引き分けたトニコ相手に、朴の完勝劇。これで、再出発の狼煙は上がった。常々朴は、“現在の修斗をぶち壊したい”と言っている。そして、自分のスタイルが完成されれば、それが出来るとも。朴の試合を観れば、打撃に重きを置いているのはすぐに分かるだろう。このまま、スタンドでKOするようなスタイルを目指すのか、それとも他のアクセントを加えたスタイルを目指すのか。朴の修斗が、また観たい!




【第六試合】 バンタム級 5分3R
× 廣野 剛康 vs 久保山 誉
(和術慧舟會) (K'z FACTORY)
判定 0-3
観戦記
 廣野にとってはリベンジ戦。前回の判定が物議を醸しただけに、久保山にとってもケリを付けるべく、並々ならぬ気合いが入っていた。両者攻め合い、スピーディな攻防があったものの、インパクトに欠ける試合であった事は否めない。勝利した久保山は、マモルとの対戦を示唆するも、まだまだ実力の差はあるのでは?
 今後新人王トーナメントを勝ち上がってくる若獅子との闘いで、バンタム級トップ選手としての威厳を保てるかどうか、久保山の真価が問われるだろう。




【第七試合】 ライト級 5分3R
勝田 哲夫 vs 井上 和浩
(K'z FACTORY) (インプレス)
判定 ドロー(0-1)
観戦記
 昨年9月、チャンピオンシップに敗れて以来の試合となる勝田。敗戦からの復帰戦に加え、ケガでのブランクと不安材料が多い。対する井上は、3月に植松直哉の修斗復帰戦の相手として、初の名古屋興行のメインのリングに立つ等、俄然注目を浴びつつある。クラスB時代に喫した、痛い黒星を返上するには持ってこいのチャンスであろう。
 2人のファイトスタイルはよく似ている。ヘラクレスのような肉体をフル活用し、相手から根こそぎテイクダウンを奪うや、豊富なスタミナで上をキープしパウンドする。日本人には希な、グランド・フォー・パウンドの選手である。勝田は「井上さんは、僕の理想型」と言い、井上は勝田を「あのスタミナとパンチの強さが凄い」とお互いのスタイルを認め合っている。勿論、スタンドでの打撃や関節技、絞めなど一通りできる両者ではあるが、この対決の意味合いは“国内パウンド王”決定戦であろう。

 試合は期待通り、力と力がぶつかり合い両者一歩も引かない一戦となった。勝田が内掛けからテイクダウンを奪えば、井上もタックルで上を獲る。下になった勝田も、スパイダー・ガードのように足を利かせパンチの出所を押さえ込み、井上は勝田から初めてのパスを奪うなど、至高のグラウンド戦となった。
 ドローの判定にも、両者納得。試合内容にもお互い納得がいったようだった。2年振りの再会で、お互いの成長を確かめ合った2人は、休む間もなく再び歩き出す。1つの頂点を目指して。




【第七試合】 ライト級 5分3R
× アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラ vs 阿部 裕幸
(ワールド・ファイト・センター) (AACC)
1R 4'37" KO
観戦記
 朝日昇、巽宇宙、大石真丈、大河内衛、勝田哲夫、ステファン・パーリング、戸井田カツヤ。過去から現在まで、いずれもライト級を代表するトップシューター達である。個性豊かなこの9人の戦士達には、ある一つの共通点が存在する。それは、第4代ライト級チャンピオン アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラと闘い、そして完敗したという事実。
 誰もがその強さを認め、いつしか修斗のパウンド・フォー・パウンドとまで呼ばれるようになったペケーニョ。その強さの理由を問うと、ある者は絶対的な武器である“ギロチン”によるものだと言い、またある者はギロチン云々では無く、その身に纏う“殺気”だと言い、そしてある者はライト級を凌駕する圧倒的なフィジカルの強さだと言う。これらの証言は、まさに“心・技・体”が揃った完全無欠の王者の証明と言えるだろう。

 しかし、そんな完全無欠の王者に立ち向かう、勇敢な戦士がここにいた。その勇者の名は“阿部裕幸”。関係者やファンから“兄ィ”と親しまれ、リング外での人望も厚く、一言で表すならば、まさに“義”の人である。そんな“兄ィ”の実力はというと、レスリングをバックボーンに持ち、最近では“港太郎”から打撃を学びシュート・ボクシングにも参戦するなど、“打・投・極”のバランスが良い選手である。
 記憶に残る戦績を振り返ると、現フェザー級チャンピオンである大石真丈を、猪木アリ状態の下から顔面を幾度も蹴り上げて、大ダメージを与えたもののドローだった試合や、ADCC日本予選で、あの勝田哲夫からチョーク・スリーパーによる一本勝ちを奪った試合、サムライルール初挑戦によりMAキックのチャンピオンである佐藤堅一の打撃を凌ぎ、腕十字で大逆転勝利を収めた試合などが挙げられる。振り返って見ると、戦前予想が劣勢な時ほど、良い結果を残しているのが分かる。“兄ィは、大一番に強いと見た。”

 防衛を重ね、着実に人気が定着しているペケーニョだが、この日ばかりはいつもと勝手が違う。阿部兄弟のサポーターで埋められた後楽園ホールは、完全にアウェイ。そのせいか、入場時からペケーニョの表情が硬い。少し気負い過ぎている感は否めない。反対に、兄ィはというと、入場時から清々しい表情をしている。腹は括ったと言うのだろうが、この大一番で大したものだ。
 
 1R。兄ィがリング中央を獲り、ペケーニョはその周りを回る。打撃で勝負することを宣言していた兄ィにとっては、理想の滑り出しと言える。兄ィは積極的に右ローを当てて行く。インローも当たり初める姿から、今日の兄ィは良いと見た。しかし、ペケーニョだって黙ってはいない。飛び込むように、接近してパンチを振り回す。至近距離から放たれるペケーニョのパンチを、致命傷にならない程度で捌き、ローを返す。1R中盤に差し掛かっても、兄ィがリングの中心を制し、ペケーニョはその周りを回らせられている。はたから見れば、チャンピオンは兄ィに見える展開だ。兄ィがペケーニョを捕まえようと近づくと、いつの間にか2人の距離はお互いの制空圏内へと突入していた。ペケーニョが安易にサイドステップを刻んだその時。

 「ドンピシャリだ!」

 
 兄ィの左フックがペケーニョの顔面を打ち抜いている。返しの右ストレートが必要ない程のダメージを受け、ペケーニョが崩れ落ちた。あのペケーニョが白目を剥いている。テンカウントを数える間もなく、兄ィは勝利を確信した。そして、観客は瞬時に受け入れた。兄ィのKO勝ちという歴史に刻まれる快挙を。


  過去に味わった事の無い一体感であった。阿部サポーターだけでなく、会場中の人達全員が、目に涙を浮かべ、知らず知らずの内に立ち上がり、拳を天に突き上げている。人々から出る拍手・歓喜・絶叫、それらの鳴り止まぬ“音”が、勇者から最高の笑顔を引き出した。そんな笑顔の勇者からプレゼントされた、可能性。それは、人間としての無限の可能性であり、これからの修斗という競技の無限の可能性である。

 “兄ィ、あなたは最高の勇気を持ったシューターです。”



試合後記

 新しい修斗を観た。選手の顔ぶれ、客層、そして試合内容。それは、最近の下北からも感じることだ。アマで活躍した選手が矢継ぎ早に頭角を現してくる。早い者ならデビューして1年以内にクラスAに上がってくる。そして、可能性を持った選手には、早くもサポートする人々の声援が聞こえてくる。主に、道場関係の人が多いようだ。そして、試合内容。リングに上がる選手達から、プロ意識が伝わってくる。
 ウェルター級チャンピオンの五味選手が、雑誌でこんな事を言っていた。「若い子の試合が面白く無いと言う人がいるけども、我慢してやって下さい。みんな、どうしても勝ちてぇんだ。真剣勝負の修斗で、どうしても勝ちてぇんだという気持ちなんです。」と。五味選手はデビュー当時からこの気持ちを全面に出す典型。ここで大事なのは、この「勝ちたい」の気持ち。決して「負けたくない」では無いところ。様々な事情で修斗から離れて行く人がいる。これは、選手も観客もしいては関係者も。そんな中、頂上に登りつめた人はこの「勝ちたい」気持ちが一番強い人なのだろう。改めて、修斗のチャンピオンの凄さを思う。
 兄ィには12月のNKホールに於いて、ベルトを巻いたペケーニョが待っているだろう。ベルトを腰に巻き、殺気というオーラを纏った本気のペケーニョに対し、大歓声を力に変えられる天性を持つ、大一番に強い兄ィ。これだけで、NKホールは買いでしょう。


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